ガヤガヤした場所を抜け、船は静かなところまで登っていった。
ほとりで炎が上がっていた。
焚き火くらいの小さな炎。
そこは火葬場。
周りに日本のような火葬施設があるわけではなく、木を摘んだそこへ死体を置き、そのまま火をつけるというシンプルなもの。
「写真は控えてください。」
ガイドのアジャーシさんは静かに言い、目を瞑り手を合わせた。
私は人が焼ける炎を初めてみた。
それはそれは鮮やかなオレンジの光だった。
そのヒトが生きた入れ物が、空気に煙となって立ち込める。
体は空気と土と水になる。
ヒトも自然なのだと実感した。
最後の灯火を皆に見せて、そのヒトは静かに灰になっていった。
煙は天へ、体は土へ、
瞳はガンジス川に流れ、そこから新しい世界を見るのだろう。
家族がそれを静かに眺めている。
その表情は悲しみの中であるが、どこか安心した表情だった。
この川で最期を迎えようと、インドを歩けど、ここまでたどり着けず道で力尽きる者がたくさんいる。私が見た炎の中の人物は、幸せ者。
家族に見とれられ、観光客にまで見とれられ、
あたしの心の中に刻まれた。
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